「腰椎すべり症」の腰痛について


 「腰椎(ようつい)すべり症」(図1)の症状は、腰痛と下肢症状に分けられます。今回は、その腰痛について予防と治療法の説明をします。
 

 図2のように腰椎は前方が椎間板で、後方が椎間関節でつながります。この椎間関節(以下、関節と略します)の変化は、特有の神経(図2のa)で中枢に伝わるため、関節に起こった異常は素早く察知できます。

 
 例えば、中腰で重い物を持ったり、慣れない力仕事などで関節に負担が掛かると、それが身体にとって有害と判断された時点で腰痛が発生します。従って、この場合の腰痛は“これ以上無理をしたら腰を傷めますよ”という警告の役割を果たします。

 
 しかし、変形性腰椎症(平成18年6月24日号)などで関節が変形すると話は変わります。つまり、変形によって関節はもとより神経まで過敏状態になるため、普段では何ともない負担で腰痛が発生します。しかも、その後も痛みが持続して、警告であったはずの痛みが身体に有害な作用を及ぼします。このような関節の異常で腰痛を生じるものが椎間関節症(同年7月29日号)です。

 
 さて、変性すべり症では一部の関節がずれています。また、すべり症は中高年以降に多いため、変形性腰椎症を合併して椎間関節症が起こりやすくなります。従って、すべり症では長時間の立ち仕事や歩行は避けて、肥満があれば体重を減らすなどの努力が必要です。

 
 また、筋力トレーニングの目的で軽い運動も必要ですが、重力による負担が少なくなるプールでの水中歩行がお勧めです。不幸にして腰痛が発生した場合も、椎間関節症は治りやすいので、余病を防ぐためにも早期に積極的な治療を開始することが重要です。

 
 治療では安静が基本となります。次いで消炎鎮痛薬の内服や外用、コルセットなどの装具も検討されますが、椎間関節ブロック(同年7月29日号)が奏功します。このブロックは腰痛の原因となる関節に局所麻酔薬と消炎鎮痛薬の混合液を注射するものですが、関節の変形が軽い場合は「担がれてきてスキップで帰る」と表現されるほどの効果を発揮します。もちろん、ブロックで関節の変形が戻るわけではありませんので、変形が強く、痛みが再発しやすい場合は関節の高周波熱凝固(同年9月30日号)が必要です。

 
 治療で痛みが緩和した後は、筋力の低下を防ぐためにも無理のない範囲での家事や仕事をした方がよろしいようです。