首・肩・肩甲骨の痛みの治療法


 このヘルシーコラムでは、身近にある頑固な痛みと神経ブロックという治療法について説明していますが、いまだに「何回もブロックすると身体に悪いのでは?」「ブロックすると骨がもろくなると言われた」といった話を耳にします。しかし、神経ブロックでは、こういったことが起こらないことが特徴です。そこで、今回の硬膜外ブロックの説明で、神経ブロックに対するさまざまな憶測、疑問、不安などを払拭(しょく)したいと思います。
 

 頭を支えて両腕の複雑な動きを可能にするため、頚椎(けいつい)やその周辺の筋肉には負担が掛かりやすくなります。そのため、悪い姿勢や精神的なストレスにさらされると筋肉は容易に血流障害に陥って、首や肩に筋肉痛を生じます。


 さらに、痛みが慢性化して凝り≠形成することも少なくありません。その凝りは東洋医学のツボに相当することが多く、押さえると響くような痛みが発生するため「トリガーポイント」と呼ばれます。


 腕組みをする格好で人さし指で反対側の肩を押さえてみてください。中ほどに肩全体に痛みが響く部位がありませんか。さらに手を伸ばすと肩甲骨の内側にも響く部位が見つかります。それぞれが、「肩井(けんせい)」(図のA)、「肩外兪(けんがいゆ)」(同B)です。この肩外兪の下方に位置するのが「膏肓(こうこう)」(同C)ですが、よほど身体の柔らかい人でも指で押さえることは困難です。


 故事に病(やまい)膏肓に入る≠ニいう言葉がありますが、痛い所に手が届かないことから、治る見込みのない病気になる≠ニか、好みやクセが救いがたい≠ニいう意味で使われます。


 ここで、(肩井)や(肩外兪)の痛みは40歳代の女性に多く認められます。家事などで筋肉に疲労が蓄積しやすく、不良姿勢・ストレス・睡眠不足・内臓の病気などがきっかけになるケースが多いようです。普通は両側性であり、は合併しやすいのが特徴です。


 一方、(膏肓)は背中を丸めた姿勢でデスクワークをする人に認めやすく、約半数にを伴います。の症状は不快な痛みと表現されることが多く、健側の手で痛む側の手首を持って、その手首を頭の高さまで持ち上げると楽になるのも特徴です。


 治療では姿勢を正して日常の生活様式を改善することが第一です。症状が軽い場合は筋肉の血流改善を目的に電気療法やマッサージなどの理学療法が奏功します。


 一方、慢性化して痛みが頑固な場合は消炎鎮痛薬の内服や外用なども必要ですが、局所麻酔薬をトリガーポイントに注射する治療法(トリガーポイント注射)がお勧めです。


 ここで、肩や肩甲骨の痛みの中でも特にBとCは頚椎由来の痛みであることが多く、肺などの内臓の病気が隠れている場合もありますので、痛みが続くときは専門で診察を受けた方が無難です。